「あなたのリップバームは、ゲイの男の子っぽい? それともストレートの女の子っぽい?」——2026年2月、Instagramにそんな問いかけとともに一枚の図が投稿されました。横軸は「straight girl/gay guy」、縦軸は「millennial/gen z」。4象限に60本近いリップバームが並ぶ、通称「リップバーム・マトリックス(the lip balm matrix)」です。
作者は、のちに「ゲイ・フレグランス・マトリックス」で知られることになるDerek Deng(@derekdengg)。ヴァセリンとアクアフォアが軸の中心に座り、ラネージュやDiorのまわりをGlossierやRhodeが取り囲む。そしてよく見ると、日本のDHCまでいる。この記事では図の読み方を整理したうえで、登場するリップバームのうち日本で買えるものを象限ごとに紹介し、後半ではMaison Lilas Blanc流に「彩る⇄整える」「定番⇄新定番」という誰でも使える座標に読み替えてみます。
「リップバーム・マトリックス」とは
the origin投稿されたのは2026年2月17日。作者のDerek Dengは「ビューティー・ジャーナリズムの名において、”tasteful twinks”から”BuzzFeed世代のミレニアル”まで、あらゆる人に『どのリップバームを使っている?』と聞いた」と書いています。Googleフォームで集めた回答をもとに図を作り、その後も回答を反映して更新し続けているそうです。
作者の持論はこうです。リップバームは、あなたが最も忠実に使い続けている美容品である。一日に何度も塗り直し、どこへ行くにも持ち歩く。だからそれは、その人の趣味と自己像と消費の好みを映す”象徴”になる——。香水の図より半年早いこの投稿は、のちのシリーズの原型でもあります。
2本の軸の読み方
横軸のstraight girl⇄gay guyは、アメリカのビューティー文化における二つの典型像。左は色やツヤで唇を”彩る”人たち、右は無色のバームやオイントメントで唇を”整える”人たち、と読むとわかりやすいと思います。
縦軸のmillennial⇄gen zは世代。上に行くほど薬局の棚にある定番(アクアフォア、カーメックス、バーツビーズ)が、下に行くほどSNSで広まった新しい定番(ラネージュ、Rhode、Glossier)が並びます。
そして軸の交点に座っているのは、ヴァセリン。世代も性別も超えて、誰のポーチにも入っている——香水の図でANOTHER 13が担った役割を、リップバームの世界ではヴァセリンが担っています。
この図はアメリカのユーザーの回答をもとにした、作者のユーモア混じりの”傾向の地図”です。象限は「その製品を選んでいる人の傾向」であって、誰が何を使うべきかを決めるものではありません。日本では手に入らない製品も多いので、この記事では日本で買えるものを中心に、象限は「リップバームの性格を言い当てる座標」として扱います。
4つの象限をタイプで読む
the four quadrants図に登場するリップバームのうち日本で正規に入手できるものを中心に、当ブログが座標を整理し直しました。
- ラノリップス 101 オイントメント
- バーツビーズ ビーズワックス
- Dior アディクト リップ グロウ
- ホメオプラスミン(並行輸入)
- カーメックス
- キールズ リップバーム No.1
- イソップ プロテクティブ リップバーム
- アクアフォア(並行輸入)
- ラネージュ リップ スリーピングマスク
- DHC 薬用リップクリーム
- トリデン
- Glossier/Rhode(参考)
- Dior アディクト リップ グロウ オイル
- ニベア リップ
- ヴァセリン リップ ロージー
- EADEM/Experiment(参考)
Derek Deng(@derekdengg)「the lip balm matrix」をもとに、日本で入手できる製品を中心にMaison Lilas Blancが再構成。配置は元図の位置関係を参考にしたおおよそのものです。
| 象限 | 日本で買える代表 | 形状 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 彩る × 定番 | ラノリップス、バーツビーズ、Dior リップ グロウ | チューブ/スティック | 色やツヤはほしいが、流行より信頼で選びたい |
| 整える × 定番 | カーメックス、キールズ、イソップ、ブリステックス | チューブ/ジャー/スティック | 無色で、乾きをしっかり守りたい |
| 原点 | ヴァセリン | ジャー | 迷ったらここから。全身にも使いたい |
| 彩る × 新定番 | ラネージュ、DHC、トリデン | ジャー/スティック/チューブ | 夜のケアや、ポーチの中の”かわいさ”も大事 |
| 整える × 新定番 | Dior リップ グロウ オイル、ニベア、ヴァセリン ロージー | オイル/スティック/ジャー | 無色に近いままツヤだけ足したい |
【中央】ヴァセリン——世代も性別も超える原点
the centerヴァセリン オリジナル ピュアスキンジェリー
Vaseline図の中でヴァセリンは3か所に登場します。軸の交点に大きなジャー、右下に小さなジャー、そしてピンクの「ロージー」。作者がヴァセリンを原点に置いたのは、これが”どの象限の人も結局は持っている”製品だからでしょう。うるおいを閉じ込めるだけの、いちばん素朴な選択。迷ったらここから、という意味でも原点です。
【右上】gay guy × millennial ——整える × 薬局の定番
ointments & drugstore classics右上は、無色で、機能で選ぶ人たちの象限。アクアフォア、カーメックス、セラヴィ、キールズ。アメリカの薬局の棚がそのまま図になったような一角で、共通しているのは「ツヤより保護」という考え方です。
カーメックス クラシック リップバーム
Carmex黄色いチューブが図の右上、最上段に。1937年生まれの、アメリカで最も”ミレニアル”なリップバームです。塗った瞬間のひんやりした清涼感が特徴で、好みは分かれますが、一度慣れると他に戻れないという人が多い。日本ではバラエティショップや通販で手に入ります。ジャーとチューブとスティックの3形状があり、図に載っているのは黄色いチューブ。持ち歩くならチューブ、家で使うならジャーが定番です。
リップバーム No.1
Kiehl’s図の右上隅、最もgay guyかつミレニアルの位置。1851年創業のニューヨークの薬局が原点のブランドで、白いチューブに黒い文字というデザインごと”整える派”の象徴です。スクワランやアロエなどを配合した、ベタつきの少ない使い心地。当ブログのニッチブランドのリップバーム比較でも取り上げています。
プロテクティブ リップバーム SPF30
Aesop黒いスティックが図の右上、カーメックスの隣に置かれています(当ブログの判読)。イソップのリップバームはUVカットつきで、ポケットに入れて持ち歩く”整える派”の完成形。香りも控えめで、性別を問わず使いやすい1本です。日本ではmeeco(三越伊勢丹化粧品オンライン)で購入できます。
ほかにこの象限にいる、日本で買える製品
- ブリステックス リップメデックス——青い丸いジャー。図の右側中段。メントール系のひんやり感で、カーメックスと並ぶアメリカの定番です。
- マリン&ゴッツ リップ モイスチャライザー——白いチューブに青い文字。ニューヨークのアポセカリー系ブランドで、伊勢丹新宿店や公式オンラインで。
- アクアフォア/セラヴィ ヒーリングオイントメント——図の右上を象徴する2本ですが、日本には正規展開がなく並行輸入が中心。成分の考え方はヴァセリンに近く、代わりに使うならヴァセリンで十分です。
【左上】straight girl × millennial ——彩る × 薬局の定番
tinted classics左上は、色やツヤはほしいけれど、SNSの新製品より昔からあるものを信頼する人たちの象限。バーツビーズ、ラノリップス、ローズバッド サルブ、そしてDior。ミレニアル世代が20代のころに定番になった製品が並びます。
ラノリップス 101 オイントメント
Lanolips淡いピンクのチューブが、図の左側の中段、横軸のすぐ上に置かれています。オーストラリア生まれで、唇だけでなく指先や乾いた部分にも使える”101通りの使い道”が名前の由来です。ラノリン(羊毛脂)のこっくりした感触は、ワセリン派とは少し違う満足感があり、ミント香の「ミンティ」など香りのバリエーションもあります。日本ではバラエティショップや公式オンラインで。
ビーズワックス リップバーム
Burt’s Bees黄色いスティックが左上の中段に。1984年にメイン州で始まった、アメリカの”ナチュラル”の代名詞です。ペパーミントの香りとミツロウの硬めの感触は好みが分かれますが、”straight girl × millennial”の象限を一本で表すならこれだと思います。日本では公式オンラインやバラエティショップで。
ディオール アディクト リップ グロウ
Dior図の中央やや左、横軸の少し上。ミレニアルにもZ世代にも支持されている”彩る派の共通言語”で、だからこそ縦軸の中央近くにいます。当ブログのリップクリームの選び方でも詳しく取り上げていますが、色つきリップの入口としていまも最有力の1本です。
ほかにこの象限にいる製品
- ホメオプラスミン——ピンクと白のフランスの軟膏チューブ。図の最上段中央。日本では並行輸入が中心です。
- ローズバッド サルブ——青い丸缶。1892年生まれのアメリカのクラシックで、図の中央左。国内はセレクトショップや並行輸入で。
- Glossier バーム ドットコム/MERIT/Summer Fridays——左上の主役たちですが、いずれも日本に正規展開がありません。参考として。
【左下】straight girl × gen z ——彩る × SNSの新定番
glow, tint & K-beauty左下は、図の中でいちばん製品数が多く、いちばん色がある象限。ラネージュ、Rhode、Glossier、Refy、Gisou。ツヤと色、そして”ポーチから出したときのかわいさ”で選ぶ人たちです。そしてここに、日本のDHCがいます。
リップ スリーピングマスク
LANEIGEピンクのジャーが左下の上段、最も目立つ位置に。TikTokで”夜のリップケア”という習慣そのものを広めた製品で、K-beautyがアメリカのZ世代の定番になった象徴です。日本でも公式オンラインやバラエティショップで手に入ります。ベリーのほかに香りのバリエーションがあり、ジャーに小さなスパチュラが付属するのも”夜のケア”らしいところ。寝る前に厚めにのせて、朝ティッシュで軽く押さえるだけで、翌朝の唇の感触が変わります。
薬用リップクリーム
DHC図をよく見ると、横軸のすぐ下、縦軸の少し左に、見慣れたベージュのスティックが立っています。DHCの薬用リップクリームです。アメリカでは「DHC Lip Cream」としてZ世代に発見され、”日本のドラッグストアの名品”として定着しました。日本で生まれた製品が海の向こうの図に載っている、この記事でいちばん嬉しい発見でした。オリーブバージンオイルのやわらかいテクスチャーで、無香料。彩る派の象限にいながら無色という、日本のドラッグストアらしい立ち位置です。
ほかにこの象限にいる製品
- ラネージュ リップ グロウイ バーム——スリーピングマスクの昼用。図の最下段に、ピンクのチューブで。
- トリデン——黄色いチューブの韓国ブランド。図では縦軸のすぐ右、gen z寄りの位置。国内は公式オンラインや通販で。
- Rhode/Glossier/Refy/Gisou/e.l.f.——左下を彩るSNS発のブランドたちですが、いずれも日本に正規展開がありません。参考として。
【右下】gay guy × gen z ——整える × SNSの新定番
clear gloss & treatment右下は、”整える派”の新しい世代。無色は無色でも、ツヤは欲しい。オイル、ペプチド、クリアグロス。EADEM、Experiment、Rhodeのトリートメント、そしてDiorのリップ グロウ オイル。ミレニアルの薬局的な”保護”から、Z世代の”仕上げ”へ変わった象限です。
ディオール アディクト リップ グロウ オイル
Dior図の右下、最下段。同じDiorでも、バームのリップ グロウが左上寄りなのに対して、オイルは右下にいます。ツヤの質が”バーム”から”ガラス”に変わると、座標もこれだけ動く。無色に近いカラーを選べば、”整える派”のツヤ足しとして一番手に取りやすい1本です。
ニベア リップ
NIVEA青いスティックが図の右下、横軸のすぐ下に。ドイツ生まれで世界中の薬局にある製品が、アメリカではZ世代の”整える派”に分類されているのが面白いところです。日本では「ディープモイスチャー」など種類が豊富で、当ブログのリップクリームの選び方で比較しています。
ほかにこの象限にいる製品
- ヴァセリン リップ ロージー——ピンクの小さなジャー。ほんのり色づく”整える派の彩り”で、右下の上段に。
- アクアフォア リップリペア——右下隅、最もgay guyかつgen zの位置にあるチューブ。並行輸入のみ。
- EADEM ル シュシュ/Experiment ソフトウェア/Rhode ペプチド リップ トリートメント——作者自身のお気に入りとして名前が挙がるEADEMを含め、いずれも日本未展開。参考として。
形状で選ぶ——ジャー、スティック、チューブ、オイル
jar, stick, tube & oil図を象限ではなく”形”で眺めると、もうひとつの傾向が見えてきます。右上の整える派はジャーとチューブ、左下の彩る派はチューブとオイル、そして上のミレニアル側にはスティックが多い。形状は使い方そのものなので、象限を決める前に、自分がどの形を続けられるかを考えておくと失敗が減ります。
ジャー——量を調整できる、家の定番
ヴァセリン、アクアフォア、ラネージュ、ブリステックス。指で取るぶん量を自由に調整でき、夜に厚めに塗る使い方に向きます。一方で外出先では手を洗ってから、という手間があるので、図の中でもジャーは”家で使う定番”として上の段と左下の夜用に集中しています。
スティック——手を汚さない、持ち歩きの定番
バーツビーズ、DHC、ニベア、イソップ、キールズ。鏡を見ずに塗れるのが最大の利点で、”整える派”の日常はほぼこの形で回っています。硬めのテクスチャーは薄くつくぶん塗り直しの回数が増えるので、ポケットに一本、が基本です。
チューブ——密閉性と、塗り心地の幅
カーメックス、ラノリップス、ホメオプラスミン、トリデン。中身が空気に触れにくく、やわらかいテクスチャーを保てます。塗り口の形で使い心地が大きく変わるので、図の右上(整える派)と左下(彩る派)の両方にまたがっている形状です。
オイル——ツヤで仕上げる、いちばん新しい形
Dior リップ グロウ オイル、Gisou、e.l.f.。保湿というよりは”仕上げ”で、図の下半分、とくに右下に集まっています。単体でも使えますが、スティックで整えたあとに重ねると、整える派と彩る派の境界がちょうど消えます。
Maison Lilas Blanc流に読み替える——「彩る⇄整える」×「定番⇄新定番」
our readingここからは元ネタの軸から離れて、この図を日本の売り場で使える座標に読み替えます。横軸の「straight girl⇄gay guy」は「彩る⇄整える」。色やツヤで唇を仕上げたいのか、無色で保護したいのか。縦軸の「millennial⇄gen z」は「薬局の定番⇄SNSの新定番」。何十年も棚にあるものを信頼するのか、いま広まっているものを試したいのか。
この読み替えの良いところは、性別も世代も関係なく、その日の目的だけで象限が決まることです。マスクをする日は右(整える)、人に会う日は左(彩る)。長く使う定番を一本決めたいなら上、気分を変えたいなら下。ヴァセリンは、どの象限からも同じ距離にある”帰る場所”です。
自分の象限を見つける、3つの質問
- 鏡を見て塗る? 見ずに塗る?——見ずに塗れるものが欲しいなら右(整える)、鏡の前で仕上げたいなら左(彩る)。
- ポーチに何本入っている?——一本だけなら上(定番)を。二本以上あるなら、下(新定番)の一本を試す余地があります。
- 唇の悩みは「乾く」?「くすむ」?——乾きなら右上のオイントメント系、くすみなら左のティント系から。
日本の棚で組む、4象限の”最小セット”
もし4本だけ選ぶなら——右上にキールズかカーメックス、左上にDior リップ グロウ、左下にラネージュ、右下にニベア。そして原点にヴァセリン。この5本で、図の全象限を日本の店頭だけでカバーできます。DHCを左下に加えれば、”日本代表”の座標も埋まります。
よくある質問
FAQ- この図は、性別でリップバームを分けているということ?
- いいえ。アメリカの回答者が「自分はどれを使っているか」を答えた結果の傾向を、作者がユーモアを込めて地図にしたものです。この記事では横軸を「彩る⇄整える」と読み替えているので、性別に関係なく目的で選んでください。
- アクアフォアやGlossierは日本で買えますか?
- 正規展開はなく、並行輸入や海外通販が中心です。保管状態や真贋の見極めが難しいため、当ブログでは日本で正規に手に入る製品を優先しています。アクアフォアの代わりならヴァセリン、Glossierのバームの代わりならDior リップ グロウやラノリップスが近い使い心地です。
- SPF入りのリップバームは必要?
- 日中、屋外で過ごす時間が長い日には心強い選択肢です。図の中ではイソップ(SPF30)が右上の整える派に置かれています。夜はSPFなしのジャータイプに切り替える、という使い分けが一般的です。
- 夜用と昼用は分けたほうがいい?
- 分けると続けやすくなります。夜はラネージュやヴァセリンのようなジャーで厚めに、昼はスティックやチューブで薄く塗り直す。図の縦軸をまたいで2本持つ、と考えるとわかりやすいと思います。
- 元の画像はどこで見られますか?
- 作者Derek Deng(@derekdengg)のInstagramの元投稿で公開されています。この記事では画像を転載せず、冒頭に元投稿を埋め込む形でご紹介しています。
まとめ
fin.リップバームは、一日に何度も触れる、いちばん小さな美容品です。だからこそ選び方に人柄が出る——作者の持論は、図を眺めているとたしかにそうだと思えてきます。彩るのか、整えるのか。定番なのか、新定番なのか。座標をひとつ決めて、原点にヴァセリンを置いておけば、ポーチの中はきっと迷わなくなります。
出典:Derek Deng(@derekdengg)のInstagram投稿「the lip balm matrix」(2026年2月17日)およびその本文。画像の著作権は作者に帰属します。製品の特徴はブランド公式の記載をもとに当ブログが要約したもので、図の中の製品の同定は画像からの判読を含みます。本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。